世界中の子ども達に笑顔を。途上国の子どもの教育支援・緊急支援を行う国際NGOグッドネーバーズ・ジャパン

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2024.11.13 活動報告

【ウクライナ危機】ドニプロペトロウスク州での高い脆弱性を抱える人たちへの保護事業 

グッドネーバーズ・ジャパン(以下、GNJP)は、ウクライナ東部のドニプロペトロウスク州にて、現地団体The Tenth of April (以下、TTA)と協力して、「ウクライナ東部ドニプロペトロウスク州における脆弱世帯を対象にした現金給付、保護、心理社会支援複合事業」を実施しています。 

ウクライナでは、戦争により多くの人々が避難生活を余儀なくされ、経済面や住居、医療など様々な困難に直面しています。 本事業のうち、「現金給付」と「ケースマネジメントを通じた保護」の支援活動では、危険にさらされている人々の命を守り、脆弱性を抱える人々が直面する複雑な課題に対処できるよう支援することに重点を置いています。 

現場の第一線で働くスタッフの声と共に、支援の様子をご紹介します。 

※本事業は、ジャパン・プラットフォームの助成により実施しています。 

保護のための現金給付(キャッシュ・フォー・プロテクション)

本事業では、とりわけ弱い立場に置かれている人々のニーズに対応しリスクから守るため、現金給付を行っています。対象となるのは、前線地域からの避難者、暴力からの生存者、幼い子どもや高齢者がいる家庭、障害者など、様々な要因で保護を必要としている人々です。

現金給付を受けることによって、裨益者は暴力から逃れるための安全な居場所を確保したり、必要な医療や法的支援を受けられたりと、差し迫った脅威に対処することができます。また、戦争で紛失した証明書などを再発行したり、さらなる暴力や搾取を防ぐための専門的なサービスを利用したり、子どもに教育を受けさせたりと、個々の状況に合わせた支援を受けることができます。

GNJPと共に本事業に取り組む現地団体TTAの現金給付担当スタッフは、現金給付の対象になり得る人々を訪問し、状況の調査と確認を行います。現金給付がその人にとって適切な支援かどうか、給付の対象となる場合はどのような使い方が最善なのかを検討します。

現金給付を担当するダリアとオルハは次のように話しました。

「私たちの日々の原動力となっているのは、人々を助けたい、支援したいという思いです。権利を蔑ろにされている弱い立場の人々が差別されないよう、社会的支援とその構造を変えたいとも考えています。
個別のニーズに対応した支援がいかに重要かを理解することで、私たちはそれぞれの家族の事情や問題に深く寄り添うことができます。困難な時に見て見ぬふりをせず、行動することが私たちの使命です。」

ケースマネジメントを通じた保護

経済的な支援に加え、個人のニーズに応じた支援を提供するため、本事業ではケースマネジメントも実施しています。TTAのケースワーカーが個人を訪問し、どのような保護を必要としているか話し合い、それぞれの状況に合った行動計画を立てるお手伝いをします。ロシア軍による攻撃で被災したコミュニティを訪れて、状況の調査やニーズのヒアリングをすることもあります。

ケースマネジメントを通じて、医療機関へのアクセス、安全な住居の確保、心理的な支援の受け方など、裨益者それぞれの課題を解決するためのサポートを行います。こうしたサポートは、現実的な解決策を提供するだけではなく、裨益者の心の支えにもなっています。

ケースワーカーのインナは、裨益者との対話を次のように振り返ります。 

「最も弱い立場に置かれているのは、父親を亡くした子どもたちや、慣れない土地で収入のないまま家族を養う方法が分からない母親たちです。恐ろしい出来事を経験してトラウマを抱え、教育を受けられない子どもたちは、将来差別を受けるリスクが高いです。子どもたちは、なぜ家を出て遠くへ引っ越さねばらなかったのかも理解できず、また新しい環境に適応するのに苦労しています。高齢者もまた、子どもと同様に弱い立場に置かれています。長年自分の家で過ごすことを夢見てその家を建て、そこで引退するつもりだったのに、今、そのすべてを失う危機に直面しています。」

心の傷と回復の物語

避難民や戦争被災者の問題に日々向き合うことは、支援活動を実施するスタッフにとっても精神的な負担を伴うものです。

ケースワーカーのアンナは次のような想いを話してくれました。

「(裨益者と向き合っていて)個人的な感情に蓋をすることは難しいです。目の前の家族の痛みを一緒に感じますし、一部の人々にとっては、この支援が生死に関わり、生き延びるための足がかりになっていることに気づくのです。」

特に、占領下にあった生存者たちの体験談は悲痛なものです。あるスタッフはこう語ります。

「2人のお子さんのお母さんのお話です。戦争前、6歳の息子さんは健康そのものでした。彼は占領軍による暴力から母親を守ろうとして頭に怪我を負ってしまい、その傷が原因で2歳児と同等の発達になってしまいました。また別のケースでは、高齢の女性が地下室で占領者に拷問を受け、皮膚に銃弾を受けました。戦争で被害を受けたウクライナ人の中には、このような話がたくさんあります。私たちは、経済的な支援だけでなく、このような悲痛な話に耳を傾け、精神的な支援も行っています。」

より良い未来のために

GNJPは、みなさまのご支援とTTAとの協力により、ドニプロペトロウスク州でより多くの厳しい立場にある人々に支援を届けることができています。毎日のように空襲警報や砲撃にさらされる前線に近い地域で活動するスタッフは、厳しい状況の中で、戦争の影響を受けた人々の福祉を向上させることに全力を尽くしています。

あるスタッフは次のように締めくくりました。

「ここは私たちの土地です。人々はいつか戻れることを願っています。」

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