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2023.08.28 活動報告

【ウクライナ危機】人道支援事業 フェーズ3を開始します

2022年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻から一年半ほどが経ちましたが、依然として多くの人々が避難生活を送っています。2023年6月現在、国内避難民の平均避難期間は352日間と、一年近くに及んでいることが報告されています(IOMの報告参照)。

グッドネーバーズ・ジャパンは、紛争の発生直後より被災者への支援を行ってきました。先月終了したウクライナ人道危機対応支援事業 フェーズ2では、避難民やホストコミュニティに対し食糧、医療、および越冬支援を実施しました。

2023年8月からは、ウクライナ人道危機対応支援事業 フェーズ3を実施します。現金給付、食糧・NFIs (Non-food items/食糧以外の生活物資)の配付、医薬品キットの提供を通して、引き続き被災者を支援していきます。

※本事業は、ジャパン・プラットフォームの助成を受け実施しています。

被災者が直面する困難

長期化する紛争の影響で、ウクライナの人々は様々な困難に直面しています。

多くの家庭では収入が減少し、脆弱層が貧困に陥る可能性が高まっています。IOMの調査では、国内避難民のおよそ4人に1人が現金給付支援を主な収入源としている現状が明らかになりました (2023年1月時点)。

また、前線周辺の地域では市場や医療施設が機能しておらず、生活に必要最低限の食糧、生活物資、医薬品を手に入れることが困難になっています。市場が機能していて、激しい戦闘が行われていない地域への避難ができればよいのですが、家族が高齢であったり、障がいを抱えていたりするために留まらざるを得ない人もいます。また、住み慣れ、生活の基盤がある生まれ故郷から離れたくない、という人もいます。

GNJPの支援:本事業の内容

収入の減少や物資の調達難等の困難に直面するウクライナの人々を支援するべく、グッドネーバーズ・ジャパンは、2023年8月よりウクライナ人道危機対応支援フェーズ3を実施します。 本事業では、主に3つの活動を行います。

①現金給付

子どもがいるひとり親世帯、高齢者世帯、障がいを持つ人がいる世帯などの脆弱世帯を対象に現金給付を行います。具体的には、一人当たり2,200UAH(日本円換算で8,400円相当、ウクライナの物価は日本のおよそ半分くらい)の現金を5か月間にわたり月々支給する予定です。これにより、避難民は食糧、生活物資、医薬品および医療サービスへのアクセスや子どもの教育など、自分達が必要と考えることにお金を使用することができるようになります。

②食糧・生活物資の配付

戦闘の激しい前線の近くに位置し、市場が機能していない東部ハルキウ州、南部ヘルソン州、ザポリッジャ州等の脆弱世帯に、必要最低限な食糧および生活物資を届けます。対象となる人々は、高齢者世帯、障がい者や特別な医療ケアが必要な人のいる世帯、子どもの多い世帯等となります。合計で1,150世帯・約2,300人に配付を行う予定です。

配付する食糧は小麦粉、パスタ、米、缶詰、食用油、塩、砂糖のほか、気持ちを和らげることができるようコーヒーやチョコレートを予定しています。生活物資に関しては、石鹸、歯ブラシ、生理用品、おむつなどの衛生用品を想定していますが、支援を受け取る人たちの、それぞれのニーズに合わせて調整する予定です。

フェーズ2の食糧支援にて、受け取った支援物資を運ぶ人

③医薬品キットの提供

食糧・生活物資支援と同様、市場・薬局が機能していない東部ハルキウ州、南部ヘルソン州、ザポリッジャ州等の地域のコミュニティを対象に、コミュニティ用医薬品キットの提供を行います。キットには、ウクライナの薬局で販売されている風邪薬、消毒薬、胃薬、頭痛薬等の医薬品が入っています。一箱のキットで約200人の一か月分の医薬品を賄うことができます。本事業では、合計で15箱(約3,000人の一か月分の医薬品)を提供します。

キットは配付後、各コミュニティの保健所職員などの医療担当者によって適切に保管、管理され、必要な住民が利用できるようになります。

事業実施に向けて

本事業の実施にあたり、GNJPは2つの現地の提携団体と協働します。

現金給付に関しては、ウクライナのキーウに拠点を置き、現金やバウチャーの支給を含む現金給付事業の実施実績のある団体、SMILYVIST と協働します。食糧、生活物資、医薬品の提供に関しては、フェーズ1・フェーズ2でも一緒に事業を行った実績のある、ウクライナの団体、Palianytsiaと協働します。

現金給付事業で協働するSMILYVISTのプロジェクトチームの皆さん

現金の給付・支援物資の配付前にはニーズ確認のためのヒアリングを行い、実施中・後はインタビューを中心としたモニタリングを行う予定です。より効果的な支援を今後行うために、支援によって生活がどう変わったか、何ができたかなどを確認します。

地域の人へのヒアリングの様子

担当者より

フェーズ1・フェーズ2では、隣国ルーマニアで支援物資の調達を行い、ウクライナ側に届ける、というスタイルの支援を中心に行いましたが、フェーズ3からは、すべてウクライナ国内で完結する支援に切り替えます。この支援方法には大きく二つのメリットがあります。まず、国境を超えるための長い待ち時間や、ややこしい書類の手続きを避けることができるという点。加えて、ウクライナ経済の活性化に貢献できるという点です。

ウクライナ国内での流通は、前線地域を除いては従来通り機能しているため、ウクライナ国内で物資を調達しそのまま各地へ運搬することが可能です。ウクライナ国内で物資を調達することによって、国内の供給網は活性化します。そして、経済の活性化は人々の収入の向上、ひいては生活の安定にも繋がります。つまり、ウクライナでの物資調達を通して、微力ではありますが、私たちはウクライナ経済の活性化と人々の自立に貢献することができるのです。実際の例として、フェーズ2の越冬支援物資の一つであった保温インナーは、ウクライナ国内の縫製工場にて生産されました。現地で物資を生産することにより、縫製工場の仕事を増やすことができたのです。私たちの支援が、間接的にですが、地元地域経済の活性化に貢献した例だと言えます。

私たちは、間接的な影響も考えながら、状況に応じて、もっとも効率的かつ効果的な方法で困っている人々への支援を行っていきます。引き続き、みなさまからのあたたかいご支援、よろしくお願いいたします。

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