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2023.06.30 人道支援

【ウクライナ危機】心理社会支援(心のケア)ファシリテーターの研修を行いました

グッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)が行っている、ウクライナからルーマニアに避難してきた子どもたちのための心理社会支援(心のケア)活動についてご紹介します。 

ルーマニアに避難してきているウクライナの子どもたちは、戦争による爆撃、避難、家族や大切な人との別れなどの経験をしており、こうした辛い記憶や感情をそのまま放置してしまうと、時間の経過とともにPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、長い期間にわたって苦しむ可能性があります。子どもたちの心の傷がPTSDに繋がることを予防したり、回復を促したりするために、研修を受けたウクライナ人ファシリテーターによるワークショップを提供しています。 

ワークショップに参加する子どもたち

ワークショップでは、写真、絵、紙粘土、音楽などを使ったさまざまなアクティビティを通して、子どもたちが記憶や感情を整理しなおし、自分自身の物語を作り、表現する機会を提供します。最終的には、子どもたちが辛い経験を経た後の自分に対する自己肯定感を取り戻し、社会と繋がっていると認識できるようにサポートしていきますが、実際にどのような内容を表現していくかは参加する子どもたちが自分自身で選ぶことが重要であり、何かを描いたり作ったりすることを強制するものではありません。 

この活動を展開するため、GNJPは、5月29日から31日までの3日間、ルーマニアのガラツィ市にて、このワークショップを実施していくウクライナ人ファシリテーターの研修を行いました。日本で精神科医による研修を受けたGNJPの日本人スタッフ2名が講師となり、小学校の先生、心理士、子どもに関わるボランティアに長年携わった人など、8名のファシリテーターが参加しました。 

ファシリテーターに講義を行うGNJPスタッフ

研修では、座学での講義の後、実際のワークショップをファシリテーターに体験してもらいました。ファシリテーターはみな自分の体験や人生について積極的に語り、他の参加者とシェアしあい、ファシリテーターの役割についてもたくさんの質問が出ました。時には涙しながらウクライナに残してきた家族やペット、失った生活への思いを話したり、戦争とはまた別のトラウマについて語ったりする場面もありました。 

「大切なもの」というテーマの作品についてプレゼンする参加者
はりがねと粘土を使って自分の人生を表現するワークショップ

「復興後の理想の都市」をテーマとしたグループでのジオラマ製作では、葉っぱや空き箱などいろいろな材料を教室外から集めて街を作っていて、その表現力の高さと幅広さにGNJPスタッフも驚かされました。ファシリテーターにとっても、ワークショップを通して自分自身と向き合ったり仲間とお互いの思いについて語り合ったりする機会は貴重だったようで、ウクライナから避難してきている人たちの間で心のケアのニーズが非常に高いことがうかがえました。 

グループで「復興後の理想の都市」のジオラマを制作
制作したジオラマについてプレゼンする参加者。多様なビル群をおもちゃの箱、近代的でスムーズな行政をリモコンで表している
半分(上部)は新しい建物、半分(下部)は戦争で破壊された建物を記憶として残すという街のアイデア。どの作品でも緑や水(噴水)が多く使われるのが印象的だった

6月中旬からは、研修を受けたファシリテーターによる、子どもたちを対象にしたワークショップを開始しています。子どもたちにどのようなワークショップを実施していくのかきちんと理解してもらうため、保護者のための説明会も行い、その中で保護者の方々にもワークショップの一部を体験していただきました。今後数か月にわたって、ガラツィ市と、隣接するブライラ市にて、ワークショップを実施していきます。 

保護者向けにワークショップについて説明するファシリテーター
保護者も写真を使ったワークショップを体験した

普段はあどけなく見える子どもたちや、気丈に日々の生活を送っている大人たちですが、戦争や避難生活が与えている精神的なストレスは計り知れず、それらを軽減するための取り組みは、今後も長期的に必要とされます。引き続き、みなさまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。 

研修の修了証を手にするファシリテーターとGNJPスタッフ

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