【モザンビーク 紛争】お金が稼げるから手伝ったのではないー避難民インタビューよりー
モザンビークのカーボ・デルガド州では、政府軍や国際連合軍が、同州北部で激化する反政府武装勢力の制圧を行っています。武装勢力は制圧から逃れるために南下し、2022年6月から11月にかけて南部での襲撃が多発しました。そのような紛争から逃れるために国内避難民となった人々は、2022年11月時点でモザンビーク北部の238カ所に合計102万人以上も存在します。そのうち約51%に当たる52万人超が18歳以下の子どもで、そのうち保護者のいない未成年者は836人、また妊婦は5,824人(うち18歳以下は260人)、障害者は1,463人と推定されており、脆弱な層が多数を占めていることがわかります(IOM 2022) 。
グッドネーバーズ・ジャパンは、州都のペンバ市に次いで多くの国内避難民を受け入れているメトゥージェ郡にて2021年から水・衛生支援活動を行っています。2022年10月からは、同郡インピリ地区を対象として3基の給水施設の建設、家庭訪問を通した衛生教育、トイレスラブの配付を行うことで、水衛生設備を整え、コミュニティの人々の衛生状態、そして健康状態の改善を目指しています。
※当事業は、ジャパン・プラットフォームのモザンビーク北部人道危機対応助成事業です。
国内避難民が暮らす地域での衛生支援の必要性とは
調査からわかったこと
モザンビークの屋外排泄率は36%と、サブサハラ・アフリカの中でも最も高い水準にあります (UNICEF)。実際にグッドネーバーズ・ジャパンが事業開始直後に活動地域で行った調査でも、約2倍にあたる73%の人々が屋外排泄を経験しておりました。その理由としてトイレが遠いことやトイレが暗いことが挙げられましたが、対象地域では電気の普及が遅れているため夜間は真っ暗です。トイレが遠いと道中で怪我をしたり動物に襲われたりする危険があります。また整備されていないトイレでは深い穴がむき出しになっており、落下する危険もあります。
さらにUNICEFによるとモザンビーク全体では76%もの人々が改善された衛生施設を持たないか、使用していませんが、グッドネーバーズ・ジャパンの調査でも、実際に自宅にトイレがある世帯は15%のみで、80%の世帯が他の家族と共用、もしくは公衆トイレを使っていることがわかっています。
このように家庭トイレが無いなど、環境が整っていないことから屋外排泄をせざるを得ないことがわかりました。しかしそれは、衛生面において深刻な被害を引き起こします。特に、本プロジェクトで対象としているような農村部では、医療施設へのアクセスが悪かったり、経済的理由から病院をあきらめることがあるため、日常生活で病気の予防を徹底することがとても大切です。屋外排泄をなくし、衛生環境を整えるためにグッドネーバーズはトイレスラブ( *トイレスラブとは 床のこと。掘った穴の上にスラブを設置することでトイレを作る。)を配布し、家庭用トイレの普及を促しています。
グッドネーバーズ・ジャパンのトレーニングを受けたボランティアが2022年12月19日から約2ヵ月間かけて1,099世帯を訪問し、トイレや健康状態の確認、そして衛生啓発を行いました。その結果、879世帯でトイレスラブがないもしくは壊れていることが判明し、その世帯を対象にスラブ製作を開始しました。内58世帯には、体が不自由な高齢者や身体障がいのある方でも排泄しやすいよう、座位型の特別スラブを製作しました。
地域の名前 | 一般スラブ | 特別スラブ |
---|---|---|
セデ | 367 | 27 |
エドワルド・モンデラーネ | 212 | 16 |
ノビアネ | 242 | 15 |
合計 | 879 |
スラブ製作と同時にトイレの穴掘りを開始しました。支援地域では一般的にトイレスラブを深さ約3mの穴の上に設置するため、スラブを配布する前に穴が完成している必要があります。住民のオーナーシップを尊重しながら、確実に完成させるために、グッドネーバーズは穴掘りの道具を約15世帯に1つずつ提供しました。製作時期が雨季と重なり、少し遅れてしまいましたが3月14日から3月29日の間に879枚すべてのスラブを必要な家庭に届けることができました。
地域の人々とともに-国内避難民のコランゲさんインタビューより-
スラブ製作を行う際、地域社会の活性化や還元のために、地域の人々を雇用しています。
スラブ製作に携わった1人であるコランゲさんは、紛争から逃れた国内避難民でした。 2020年3月の風が強い曇りの日、コランゲさんと家族はインピリ地区へ避難してきました。その日のことを鮮明に覚えているというコランゲさんは何が起きたかを語ってくれました。
「突然、”反乱軍が村の近くにいるから逃げろ”という人々の叫び声が聞こえてきました。以前から武力攻撃が行われているという噂は聞いていましたが、その瞬間、村は恐怖に包まれました。私たちは持てるものを持ってすぐに走り出しました。メトゥゲ地区へ向かう車を何とか捕まえ、私たちは村を後にしました。2日間かけて、ここインピリに到着し、それから3年間ここに住んでいます」
コランゲさんが避難して来たばかりのころは職がなく、木炭を売って生活をしていましたが、グッドネーバーズがスラブ製作を始めた際、地域のリーダーがコランゲさんを職人として推薦し、活動に参加しました。
彼は製作を手伝う理由を次のように語っています。
「お金が稼げるから、私が職人だからという理由だけでチームに入ろうと思ったわけではありません。私がここに来てからずっと、トイレが不足していることが問題であると考えていたのです。屋外排泄は私たちの健康上良くありません。だから、私のコミュニティと家族を助けるために参加することにしたのです。」
また、コランゲさんは、自分の専門分野の仕事を任されたことに喜びを感じるとともに、避難民の自分を迎え入れてくれた地域に貢献できることが嬉しいのだと笑顔で話してくれました。
さらなる活動のため、ご支援のお願い
グッドネーバーズ・ジャパンは、インピリ地区で安全な水へのアクセスと家庭トイレの普及率を向上することで屋外排泄ゼロの達成を目指し、2022年10月より事業を行っています。 モザンビークでの水・衛生支援事業によって人々の命と健康を守るため、現在、Yahoo!ネット募金を通してご支援をお願いしております。いただいたご寄付は、給水施設やトイレの建設、公衆衛生を向上させるための人材育成など、現地の水・衛生支援活動のために大切に使わせていただきます。
モザンビークの人々が安全な水やトイレにアクセスできるよう皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。