【エチオピア内戦】ジェンダーに基づく暴力を受けた方への支援を行っています
2020年11月、エチオピア北部のティグライ州において、エチオピア連邦政府と反政府勢力であるティグライ人民解放戦線（TPLF）との間で武力衝突が勃発しました。さらに2021年の後半にかけて、戦闘はティグライ州からその周辺地域（アムハラ州、アファール州）へと拡大していきました。
この内戦により、多くの民間人が殺害され、深刻かつ広範な人権侵害を受けたほか、病院や学校などの公共施設も破壊と略奪の被害を受けました。2022年11月、連邦政府とTPLFとの間で停戦合意が締結され、現在北部の情勢は比較的安定しているものの、紛争の影響を受けた数百万人もの人々が緊急支援を必要としています。
グッドネーバーズ・ジャパンは、ジャパン・プラットフォーム（JPF）の助成を受け、紛争の最中にあった2021年4月から、国内避難民および医療機関への支援を継続してきました。現在は、4期目となるフェーズ4支援事業を実施しています。
対象地域となるアムハラ州南ウォロ県は、2021年11月に激しい戦闘が行われたため、さまざまな分野での緊急人道支援や復興のための取り組みが必要とされています。
グッドネーバーズ・ジャパンは、①教育、②保健、③ジェンダーに基づく暴力(GBV ※1)のサバイバー（生存被害者 ※2）支援という３つの分野において、復興のための支援を行っています。
※1 以下、紛争によるジェンダーに基づく暴力（英語名：Gender Based Violence）を「GBV」と称する。なお、GBVとは、性暴力・パートナー間暴力・児童婚・女性性器切除や虐待を含む、社会的性別に基づく暴力のことを指す。
※2 被害から生き抜いた人という意味を込めて「サバイバー」と呼ぶ動きがあり、本記事でもGBV被害を受けた方について「サバイバー」と記載する。
＜フェーズ4＞
事業名：アムハラ州における教育・保健医療サービス、GBVサバイバー支援を通じた復興事業
期間：2022年9月～2023年6月（予定）
対象地域：アムハラ州南ウォロ県
支援内容と受益者：
①教育分野：学校3校の修繕および4校への教育物資・機材の提供
②保健分野：ヘルスセンター3か所の修繕および4か所への薬品・医療機器の物資の提供
③ジェンダーに基づく暴力(GBV)のサバイバー支援：現地行政の能力強化、コミュニティでのGBV予防啓発、生計向上支援など
紛争によるジェンダーに基づく暴力（GBV）の現状
今回は、ジェンダーに基づく暴力のサバイバー支援についてご紹介します。
紛争が起こると女性や子どもなど弱い立場にいる人々のリスクが高まります。今回の北部紛争勃発後、GBVの報告件数が急増しました。武装勢力による民間人に対するレイプや集団レイプのケースが報告されており、その結果、被害を受けた人は望まない妊娠やHIVを含む性感染症、心的ストレス、トラウマなど、長期的な影響をもたらす心身の被害を受けています。
さらにGBV被害により、それまでの社会的生活や仕事を続けることが難しくなるケースも多くあります。GBVをきっかけに仕事を失うなどして経済的困窮に陥った結果、児童婚や売春といった危険な手段に頼って生計を立てざるを得なくなるリスクもあります。
今回プロジェクトの対象としている南ウォロ県では、これまでに少なくとも758件のGBV被害が報告されています（グッドネーバーズ・ジャパンが実施した現地行政への聞き取り調査による）。しかし、レイプ等の被害は偏見や社会の目を恐れて報告できないケースも多いため、実際の被害はこの数字よりも大きいとされています。
GBVサバイバーへの生計向上支援
グッドネーバーズ・ジャパンは、支援を希望する40人のサバイバーに対し、起業支援を行っています。このような生計向上支援を通じてサポートすることにより、彼らが自尊心を取り戻し、社会復帰に向け、児童婚や売春といった危険な生計手段に頼る事態を予防することができます。
2023年1月、グッドネーバーズ・ジャパンは、40人のサバイバーに対し起業研修を実施しました。4日間かけて行われた同研修では、参加者は起業に必要な知識やスキルなど基本的なレクチャーを受けた後、自身が関心のある小規模ビジネス（養鶏、カフェ、食品小売等）についての市場分析や採算性調査などを行った上で、自らのビジネスプランを作りました。
その後、これらの起業に必要な物品購入等の初期コストを賄うための資本金を提供しました。今後は、定期的なモニタリングや助言を行い、彼らのビジネスを支えていきます。
コミュニティでのGBV予防啓発のための支援
GBV予防やGBVを受けた方に対する偏見の根絶のために、村レベルで日常的な啓発活動を行うGBV予防委員会（※）に対する能力強化を行っています。
※現地で影響力を持つコミュニティのリーダーや警察、現地市民組織の代表などによって構成。政府によって各村に設置が義務付けられている。
2023年1月、グッドネーバーズ・ジャパンは、3つのコミュニティのGBV予防委員会の代表者45人に対し、能力強化研修を行いました。研修参加者は、GBVの概念、ガイドライン、サバイバーが利用できるサービスの紹介、地域におけるGBVリスク、予防・対応における課題などの点について、グループディスカッションやロールプレイングなどを交えつつ理解を深めました。
今後、研修を受けたメンバーは各々のGBV予防委員会に戻り、トレーナーとして他のメンバーのトレーニングを行う予定です。これにより、研修での学びを委員会内部に波及させ、委員会全体での能力強化を図ります。
また、グッドネーバーズとしても、各予防委員会内のトレーニングの進捗状況の確認を行うとともに、研修参加者を再び招集し、研修中に立てた活動目標の達成状況について報告し合うワークショップを開催する予定です。
グッドネーバーズ・ジャパンは、ジェンダーに基づく暴力に関連する問題を管轄する現地行政である、南ウォロ県コンボルチャの「社会問題・女性局」に対する支援も実施しています。2022年12月、紛争により機材略奪の被害を受けた同局に対し、プリンターや棚、オフィスデスクなどの機材を提供しました。これらは、GBVを受けた方の個人情報の適切な管理や、当局に相談に訪れた人達が利用できるサービス（医療やカウンセリングや法律面でのサポートなど）を紹介する業務の質・運営能力向上に役立ちます。
さらに今後、相談や支援を必要とするGBVサバイバーに対し、各種サービスとその連絡先を周知する資料を作成する予定です。この資料を公共施設などに広く配布・設置し、たくさんの人々の目に留まるようにすることで、多くの人がGBVについて知り、被害に遭った人々が支援を受けやすくなるように活動を進めてまいります。
今後の活動
ここまで、現行のフェーズ4事業におけるジェンダーに基づく暴力のサバイバー支援を中心に取り上げてきましたが、他にも紛争中に略奪や破壊の被害を受けた学校と医療施設の修繕や物資の提供も行っています。グッドネーバーズ・ジャパンは、保健・教育の面で被災地の基礎インフラの修復・復興のための活動を行うことに加えて、彼ら個人への支援を行うことにより、同地域における社会全体の復興に寄与すべく、これからも活動を継続していきます。
これらの活動は、皆さまからのご寄付から成り立っています。エチオピアの紛争被害者・国内避難民の支援をお願いいたします。
活動報告
【エチオピア内戦】被災者のニーズに合わせ支援を継続しています
【エチオピア内戦】対象地域を拡大して人道支援を継続しています
【エチオピア内戦】エチオピア全土に非常事態が発令、ティグライ州で活動を継続しています。
【エチオピア内戦】食糧・医薬物資を避難所や医療施設へ届けています
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