世界中の子ども達に笑顔を。途上国の子どもの教育支援・緊急支援を行う国際NGOグッドネーバーズ・ジャパン

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2023.01.12 活動報告

【モザンビーク 紛争】現地住民にインタビュー モザンビーク北部のトイレ事情

2017年10月以降、モザンビークでは北部のカーボ・デルガド州を中心に、武装勢力による襲撃が断続的に発生しています。5年が経過した今でも残念ながら同州の人道危機は深刻化しており、死者数は4千人以上(CABO LIGADO, 2022年9月20日)、また約94万人(IOM, 2022年7月26日)もの国内避難民が支援を必要とする日々を送っています。

グッドネーバーズは、同州で調査を行い、その結果をもとに現地が抱える課題のひとつである水衛生環境の支援事業を行っています。この事業では、国内避難民と、避難民を受け入れることで基礎インフラが飽和状態となっているホストコミュニティ住民との、両方を支援しています。 

モザンビーク事業地地図

今回は現地の「トイレ事情」に着目し、グッドネーバーズ・ジャパンの事業地である北部カーボ・デルガード州のメトゥージェ郡で、3名の方にインタビューを行いました。現地住民の話を聞くと、日本にいる私たちには想像しがたい深刻なトイレ問題が見えてきます。

※当事業は、ジャパン・プラットフォームのモザンビーク北部人道危機対応助成事業です。

現地住民へのインタビュー

アティジャさん(20代 女性)の場合

アティジャさんと息子

アティジャさんは夫と2人の子どもと一緒にインピリ地区に暮らしています。夫は近くの小学校で教員をしており、彼女は家計を支えるために自宅から約20km離れた畑に通っています。 

アティジャさん家族のトイレは家の裏庭にあり、家の周りで集めることのできる材料(棒、竹)を使って作られています。このトイレにはコンクリートの「スラブ」(※)がないため、排泄の際に穴に落ちてしまう危険性があるうえに、蓋がしっかりできず、雨水が流れ込み汚物が溢れる可能性もあります。

※スラブ:床のこと。掘った穴の上にスラブを設置することでトイレを作る。トイレスラブは一般的にコンクリートで作られている。

アティジャさんの家のトイレ
インタビューに答えるアティジャさん一家

モザンビークでは、水衛生施設の不備で亡くなるケースが大人・子ども共に死因全体の16%にも及びます(USAID,2020)。家族やコミュニティ全体の健康を守るためにも、トイレ環境を改善することはもちろんですが、アティジャさんは「もっと飲料水や(水衛生の不備が原因の病気にかかった時のために)病院が近くにあれば、私たちのためになるのに。」とも話しました。

イブライモさん(50代 男性)の場合

イブライモさん

イブライモさんはメトゥージェ郡のインピリ地区の村長で、ここに暮らして20年になります。私生活では、「リーダーとして、地域の意識向上や清潔・衛生面の推進に積極的に参加してきた。」と誇らしげに話してくれました。 

イブライモさんはコンクリートのスラブが付いた家庭用のトイレを持っており、「ここで尊厳を持って暮らせることに満足している。」と述べています。このトイレスラブはNGO(※以前この地域でプロジェクトをしていたグッドネーバーズ・ジャパンとは別の団体)による支援で受け取ったそうです。スラブ上部に付いている蓋は開け閉め可能で、雨が中に入ることを防いだり、ハエの繁殖を防いだりすることができます。 

モザンビークでは一家に一つトイレを作る経済的な余裕がなく、近所の人と共同トイレを使っている場合があります。共同トイレは家からの距離が遠いことが多く、深夜や緊急時などは野外排泄を行わざるをえない家庭もあります。そのような状況は衛生面や安全面を保つ意味で適切ではありません。

イブライモさんの家のトイレ
イブライモさん一家

イブライモさんは「スラブがなかったことは私たち家族にとって大変な問題だった。」と言います。彼の住む地域は医療へのアクセスがとても悪く、不衛生なトイレを使用したことで病気にかかっても、移動式医療団が行っている簡易診察を受ける程度が限界で、最寄りの保健所へは徒歩で約1時間もかかってしまいます。

また衛生面のみならず、「家庭用トイレは快適なだけでなく、私たち家族が尊厳を持つためにとても大切だ。」とイブライモさんは強調しました。 

ビエイラさん(60代 男性)の場合

ビエイラさん

ビエイラさんはインピリ地区に住んで25年で、現在は2人の子どもと2人の孫がいます。現在は仕事を退職し、地域の水衛生委員会のボランティアとして活動しています。 

ビエイラさんの家では、妻が畑で作っている野菜を家族で食べ、残りを売ることで年間約24,000円の現金収入を得ています。これは、モザンビークにおいても平均以下の収入です(世界銀行、2021)。「生活は質素だが、水衛生委員会のボランティア活動には情熱をもって取り組んでいる。」とビエイラさんは言いました。

トイレの状況については、「以前使っていたスラブはトイレの移動中に壊れてしまったが、その後、NGO(※以前この地域でプロジェクトをしていたグッドネーバーズ・ジャパンとは別の団体)から頑丈なスラブを提供してもらい、何とか家族専用のトイレを作ることができた。」と話しました。モザンビークでは、トイレの穴が排泄物でいっぱいになった場合はそれを埋め立てて別の場所にトイレを作りますが、スラブの強度が不十分だと、移動する際に壊れてしまうのです。

ビエイラさん一家

過去には下痢性疾患で家族が苦しんだ際、州病院に行くことを看護師に進められたにも関わらず、家から40km以上離れた病院までの交通費を用意できず行けなかったことがあったそうです。ビエイラさんは最後に「新しいトイレのおかげで、家族の健康を守り、また不慮の事故を防ぐことができるだろう。しかしインピリには未だ、トイレやトイレに使う水源を確保できない人が多くいる。」と、支援の必要性を訴えました。 

モザンビークの人々の命と尊厳を守るためにトイレが必要です

野外排泄は、衛生面において深刻な被害を引き起こします。特に、本プロジェクトで対象としているような農村部では、医療施設へのアクセスが悪かったり、あるいは経済的理由から医療をあきらめてしまったりすることがあるため、日常生活において病気の予防を徹底することが健康を維持するうえでとても大切です。免疫力の低い乳幼児にとって、不衛生な環境が原因による感染症は命取りになります。加えて、夜間や人気の少ない場所で野外排泄を行うことは、性暴力を受けたり動物に襲われたりする危険性があり、衛生面以外の深刻な問題も抱えています。

現地スタッフ高橋と現地住民

誰もが尊厳をもって安心して暮らしていくためには、野外排泄をなくし、家庭用トイレを普及することが必要不可欠だと私たちは信じています。

さらなる活動のため、ご支援のお願い

グッドネーバーズ・ジャパンはインタビューを行ったインピリ地区で安全な水へのアクセスと家庭トイレの普及率を向上することで、野外排泄ゼロの達成を目指して、2022年10月より事業を開始しています。 モザンビークでの水衛生支援事業によって人々の命と健康を守るため、現在、Yahoo!ネット募金を通してご支援をお願いしております。いただいたご寄付は、給水施設やトイレの建設、公衆衛生を向上させるための人材育成など、現地の水衛生支援活動のために大切に使わせていただきます。 

モザンビークの人々が安全な水やトイレにアクセスできるよう皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。

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