【エチオピア内戦】被災者のニーズに合わせ支援を継続しています
2020年11月、エチオピア政府とティグライ州の暫定政権であるTigray People’s Liberation Front(TPLF)との間に武力衝突が発生しました。その後、TPLFは近隣州であるアムハラ州やアファール州へ進軍し、紛争が北部3州(ティグライ州、アムハラ州、アファール州)に拡大しました。2021年12月には、TPLFはティグライ州へ撤退し、政府・TPLF間の停戦合意がされましたが、現在も一部地域で武力衝突が続いている状況です。
一時紛争地域と化したアムハラ州やアファール州では、紛争による被害が大きく、医療をはじめとした社会インフラへの復興など、実に多くの支援が必要とされています。さらに、北部3州以外に居住するアムハラ族が武装勢力の攻撃対象とされていることから、オロミア州からアムハラ州に逃げてきた国内避難民も多く、食糧などの基本的な支援を必要としています。
By UN Emergencies Unit for Ethiopia – USAID/Ehiopia Map Room, Copyrighted free use, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1519191
グッドネーバーズ・ジャパンでは、2021年4月より紛争による国内避難民および医療機関への支援を継続しており、今年2022年4月より3期目であるフェーズ3支援事業を実施しています。
<フェーズ3>
期間:2022年4月16日~9月15日
対象地域:アムハラ州南ウォロ県
支援内容と受益者:食糧支援 国内避難民860世帯、栄養支援630人、医療支援5施設
食糧・栄養支援
国連WFPの報告によると、アムハラ州では370万人以上の人々が食糧支援を必要としています(2022年2月時点)。各地での紛争を逃れた多くの人々が避難所での避難生活を余儀なくされています。アムハラ州南ウォロ県には8つの避難所が開設されていますが、未だ支援を受けられていない避難所があることがわかりました。
フェーズ3事業では、他の支援機関からの支援を受けることができていない3つの避難所で避難生活を送る人々に対し、小麦粉、豆類、食塩、食用油といった現地で良く食べられる食糧(※)2か月分を配付し、とりわけ栄養状況が悪化する子どもや妊婦・授乳中の女性に追加で栄養補助食品を提供し、栄養状態の改善をはかりました。
※エチオピアでは、テフという穀物を発酵させて作る「インジェラ」というクレープのような食べ物が主食として食べられています。通常はテフを使用して作られますが、入手ができない場合などは代用として小麦粉を使用して作られることがあります。この「インジェラ」を、「シロ」と呼ばれる豆をペースト状に調理したものにつけて食べることが一般的です。
2022年2月から発生しているウクライナ危機の影響により、エチオピア国内における食糧の価格が著しく高騰しました。特に、エチオピアではウクライナ産の食用油が流通していることから、価格が2倍以上に高騰したほか、生産をストップした工場も多く発生しました。また、ガソリン価格の高騰により避難所への輸送コストが高くなるなど、調達から配布まで多くの困難が生じました。しかし調達が可能なサプライヤーを再び調査し、860世帯分の食糧を購入することができたほか避難所にすべての食糧を届けることができました。
また、避難所への事前調査により、とりわけ栄養失調が蔓延する子どもや女性への栄養補助食品提供のニーズが非常に高いことがわかりました。これら栄養補助食品とは、調理不要かつ小さな子どもでも食べられるペースト状の食物に、ビタミン、ミネラル等の必要栄養素を加えた栄養補助食品であり、主に栄養失調の治療や予防に使われます。
グッドネーバーズ・ジャパンは国連ユニセフ等が同国で採用するコーンと豆をベースとしたCSB (Corn and Soya Blend)を購入し、3つの避難所で避難生活を続ける5歳以下の子どもと妊娠・授乳中の女性630人に対し、栄養補助食品の配付を行いました。
医療支援
ティグライ州やアファール州と同様に、アムハラ州の多くの医療施設が紛争による破壊や略奪行為により被災しました。また、サプライチェーンが崩壊したことにより必要な医療物資が届かず、被災した人々や地域住民は、怪我や病気の治療を十分に受けることができず、医療崩壊が起きていました。
アムハラ州南ウォロ県では、県内にある全146施設のうち、9つの病院、101のヘルスセンター、81のヘルスポストが被災し、これよりおよそ1,000万人以上の人々が影響を受けています。
フェーズ3事業ではこうした医療施設のうち、特に医療物資の不足が著しく、優先度の高い5つの医療施設を現地行政との協議により選定し、支援を行いました。各医療施設からの細かな要望をくみ取り、治療に最低限必要とされる抗菌薬、抗炎症剤、解熱鎮痛剤など44種類の医療薬と、ブランケットや注射器などの物資、血液検査機、血圧計、パルスオキシメーターなどの医療機器を配付しました。
これにより、医療施設が再び市民へ医療サービスを提供できるようになります。
現地で活動している駐在スタッフ 松隈より
予定されていた支援物資はすべて配付が終了しましたが、継続される紛争状態により現在も新たな避難民が発生するなど、被災者への支援ニーズは未だ多くが取り残されています。8月現在、余剰金を活用し、中でも特にニーズの高かった食用油の追加配付を予定しています。現在も価格高騰や供給可能なサプライヤーが限られている状況が続いていますが、一人でも多くの被災者に限られた予算で最大限支援を届けることができるよう、現地関係機関と協力し活動を続けていく予定です。
活動報告
【エチオピア北部内戦】対象地域を拡大して人道支援を継続しています
【エチオピア内戦】エチオピア全土に非常事態が発令、ティグライ州で活動を継続しています。
【エチオピア内戦】食糧・医薬物資を避難所や医療施設へ届けています
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