【ネパール/ムグ郡】公立小中学校で衛生環境の整備を進めています
水衛生が整っていないことで、その地域にはどのような影響が出るのでしょうか。例えば、綺麗な水が出る水道や、トイレがない。ゴミを適切に処理することができない。そんな状態が、子どもたちの通う学校で起きているとしたら?生徒たちは集中して勉強できるでしょうか。
ネパールでは、国内のWASH(基本的な水と衛生、Water Sanitation and Hygiene)への平等なアクセス向上を国の重要施策に掲げています。しかし依然として、特に山岳地帯においては、交通アクセスが悪いことなどを背景に十分な水衛生設備の整備を含む開発が進んでいません。
私たちがあたりまえに感じる環境が「ない」ことが、ネパールの子どもたちにとって学習の障壁となっているケースがあります。
グッドネーバーズ・ジャパンでは、衛生的な環境のもとで子どもたちが教育を受けられるよう、ネパール山岳地帯の1つであるカルナリ州のムグ郡における公立小中学校計31校を対象に、水衛生環境を整備する事業を行っています。(2021年3月〜)
※この事業は外務省「日本NGO連携無償資金協力事業」です。
水衛生設備の整備
本事業の対象31校には適切な水衛生設備がありませんでした。そこで現在、学校の周辺コミュニティに技術研修を行い組織した建設グループを中心に、飲料水供給施設・男女別トイレ・ゴミ処分設備の建設を進めています。1年次である今年度中(〜2022年3月)には11校での建設が完了する見込みで、残りの20校についても2024年までに完了する予定です。
学校施設における水衛生設備の整備による恩恵は、校内における衛生環境の改善と健康向上だけに留まりません。以下はその他のメリットの例です。
- 授業中に家や川へ飲み水を取りに行く必要がなくなる
- 草むらなどで隠れてトイレをする必要がなくなる
- トイレが男女別になることで、誰もが安心してトイレを利用できる
- 女子生徒の性暴力被害を防ぐことができる
- 女子生徒の月経期間中の不登校や途中帰宅を減らすことができる
水衛生設備の維持管理能力の向上
建設する飲料水供給施設を今後継続的に使用していくためには、適切なメンテナンスや管理がなされる必要があります。この維持管理能力を強化するため、教師や保護者を中心とした「水衛生委員会」を事業対象校全31校に組織し、ワークショップ形式にて衛生環境管理に関する活動計画の策定を行いました。
具体的には、各校における衛生面での課題を共有し、施設の清掃及びメンテナンス頻度、衛生備品の在庫管理、衛生啓発活動の計画を定めています。また、同委員会に対し、故障の際の簡易メンテナンス方法を含めた維持管理研修をする予定です。
そして、今年度中に水衛生設備の建設が完了する11校において、学校周辺コミュニティの住民から成る「飲料水供給設備管理委員会」を組織しました。こちらに対しても、飲料水供給設備の維持管理のための研修を順次開始しています。
月経衛生対処能力の向上
月経に伴う女子生徒の体調不良やトラブルに対処できる環境を学校に整備するため、月経用品・備品の配布を行ないました。提供したのは、ベッド(シーツと毛布含む)、ナプキン、ショーツ(女性用下着)です。これにより、学校内で月経に対応する態勢が整い、月経期間の女子生徒に多く見られる不登校や授業中の途中帰宅を減らすことができます。
コロナ禍による全国的な休校により、備品の配布に遅延が生じていましたが、8月以降全ての学校が再開され、全校への配布が完了しました。
衛生啓発の実施
水衛生設備の整備だけでは、学校における衛生環境の改善が十分なされたとは言えません。それには生徒や教師、周辺コミュニティへの適切な衛生知識の普及と、衛生行動の周知が必要です。これに対し、学校内での正しい衛生知識の普及のため、適切な手洗い方法を絵を用いて説明したポスターを作成し、掲示を始めています。
10月には、爪切り・石鹸・歯ブラシ・歯磨き粉を対象校の全生徒約12,000人に提供し、生徒個人による実践的な衛生行動の向上を目指す計画です。同時に、教師を対象とした衛生教育を順次開始しており、配布した備品を使って教師から生徒への衛生教育を実施できるよう準備しています。
さらに、生徒が主体のチャイルド・クラブを各対象校に組織し、生徒自らによる適切な衛生行動や清掃、学校側への活動報告や要望伝達などが行えるよう、トレーニングを実施しています。
学校周辺のコミュニティも対象に含めた啓発活動として、「衛生啓発キャンペーン」に取り組んでいます。この活動では、キャンペーンの参加者が適切な水衛生行動を体得できるよう、手洗いデモンストレーションや演劇などを通じた啓発を実施しています。また、この活動が対象地で継続的に行われるよう、水衛生委員会へのキャンペーン実施指導も行っています。
地方行政との関係強化
建設する水衛生設備や学校における適切な衛生環境を維持するには、現地行政の協力を得て、学校と連携してもらうことが大切です。
これに対し、各地方行政との水衛生管理に関する協議を開始しています。引き続き話し合いを進めていく計画です。
また11月より各校の水衛生委員会と各地方行政との協議の場を設け、対象校の水衛生課題に対する具体的な対処方法を話し合い、両者の関係構築を進めます。