世界中の子ども達に笑顔を。途上国の子どもの教育支援・緊急支援を行う国際NGOグッドネーバーズ・ジャパン

*

ひとり親家庭の生声白書 孤独を抱えるひとり親 「長いトンネルの中にいる気持ちです」

※イメージ写真

日本の孤独や孤立に関する全国調査1によると、孤独感が「常にある」という人の割合はふたり親世帯よりもひとり親世帯で高く、経済的な暮らし向きが苦しい世帯ほど常に孤独感を感じる傾向にあります。

社会とのつながりを感じながら生活をすること、問題が起きた時に頼れる他者がいることは暮らしや心の安定においてとても大切です。しかし、グッドーバーズ・ジャパンは、グッドごはん利用者への支援活動や調査を行う中で、利用者が孤独や孤立感にさいなまれながら子育てをし、厳しい生活を送っている実情を把握してきました。本項目ではその内容について述べます。

相談できる相手がいない

グッドごはんへの利用登録を申し込んだひとり親家庭2に対し、育児について気軽に相談できる相手がいるかを尋ねたところ、26%が「いない」と回答しました。

育児の相談が気軽にできる相手はいますか

さらに、重要な事柄(生活、育児、お金など)を相談できる相手に関しては、回答者の約4割が「いない」と答えました。

重要な事柄(生活、育児、お金など)を相談できる相手はいますか

子育ての悩みや生活に対する不安などを相談できる人がいない環境では、周囲の助けを必要とする時に声を上げることが困難になっていくと予想されます。2019年に当団体がグッドごはん利用者に実施したアンケート3で、「子育てや生活で困った時に、他者に助けを求めることに抵抗があるか」を質問した結果、計7割が「抵抗がある」「どうやって助けを求めれば良いかわからない」「時間や気持ちに余裕がなくて助けを求められない」と回答しました。

子育てや生活で困った時に、他者に助けを求めることに抵抗がありますか

先の見えない孤独・・・グッドごはん利用者の声

孤独を抱える背景には、周りとの境遇の違いや社会からの不理解など、様々な要因が存在していると考えられます。私たちのもとには、孤独に苦しむグッドごはん利用者の声が多く寄せられます。

グッドごはん利用者の声
  • 日々の悩みや突然訪れる悲しみ等、溜め込んでしまい、心身に不調をきたすことが度々ある。有難いことに支えてくれる親族はいるが、日頃支えてもらっているからこそ、苦しみや不安、悲しみを思うように口にできない。子ども達を支える母、家庭内で唯一の大人、きちんとせねば、もっと頑張らねばと思うが、思うように動けない自身に不甲斐なさを感じることが多い。身近にひとり親家庭の友人はおらず、気を遣わせるのも申し訳ないので、本当の悩みを吐露できない
  • 大人が1人しか居ないので、子供に不自由な思いをさせる事があるなと感じる時もあります。お弁当が必要な時期だと、毎日毎日次の日も1日をこなせるか思い悩んで、寝られない時もあります。惨めな思いだけはさせたくないので頑張っていますが、たまに孤独を感じる事もあります
  • 急に夫を亡くし小さな子供と二人きりのため、信頼のおける成人の相談相手が欲しい。いざという時、何でも判断も決断も自分一人なのは非常に不安
  • 自分がうつと診断されており、日々の仕事でも外との関わりで疲れてしまい、なかなか相談や息抜きができません。子供には笑顔でいてほしいのですが、私が不安定になることがあり、悪い影響がでないか心配です
  • ひとり親で養育費なども無く、子ども2人に障がいがある為、2つの仕事を掛け持ちして必死で働いています。その為、時間が無く子ども達の事を十分に出来ていないと申し訳無い気持ちです。実家は遠く、又障がいのある子への理解があまり無い為、相談や援助してもらえる所も無く、いつも苦しい生活です
  • 親は高齢かつ離婚し生活に余裕なく、自身はDV被害で離婚したものの、同様の経験者がおらず理解されづらい孤独感がある
  • 長いトンネルの中にいる気持ちです

このように、子育てや生活の悩みなどを誰にも打ち明けられず、一人で抱え込むひとり親は少なくありません。

相談相手がなく、孤立状態にあることは、

→状況を改善するための情報や助言を得る機会を十分に得られず、適切な支援やリソースにアクセスできない

→悩みや問題が深刻化し、困窮状態から脱却する術を見つけられず、一層貧困を深めていく

→その状態が長期に渡れば、貧困は子どもに引き継がれ、未来の社会にも影響を及ぼす

このようなリスクがあることから、ひとり親家庭の孤独は個人だけでなく、社会全体にとっての課題であると考えられます。

COLUMN

とあるグッドごはん利用者が「つながり」を感じた瞬間

「(食品配付の受付で)名前と番号を聞かれ、私の事を知っていてくれるだけで繋がりを感じ、生きていてもいいんだと思える」

これは、あるグッドごはん利用者の方がグッドネーバーズ・ジャパンに寄せたメッセージです。

グッドごはんでは原則、対面で食品配付を行っています。これは、利用者の方々と顔を合わせて会話をすることで「つながり」を感じていただきたいという思いもあるためですが、このメッセージを受け取った時、私たちの予想を超えるような孤独を抱えたった一人で苦しんでいるひとり親家庭がいる実情を、改めて痛感したのです。

1 内閣官房「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和5年実施)」
2「グッドごはん新規利用登録時アンケート」
  • ・実施日程:2023年9月1日~2024年6月30日
  • ・対象者:「グッドごはん」への新規利用登録を行ったひとり親家庭で、ひとり親家庭等医療費受給者証の保有者(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証
  • ・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
  • ・回答者数:3,437名
3「ひとり親家庭の生活に関するアンケート」
  • ・実施日程:2019年9月13日〜10月10日
  • ・調査対象:「グッドごはん」へ利用登録をしている首都圏(主に大田区、品川区)の利用者 ※利用者は原則、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
  • ・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
  • ・回答者数:183名
MENU