「妹を学校に通わせたい」12歳の少年は今日も危険な建設現場へ・・・。
生後たった10日目に変わった人生
バングラデシュで暮らすアリフ君の人生は、生後たった10日目に大きく変わりました。父親が亡くなったのです。そして数日後、母親はアリフ君と双子の妹を置いて出て行きました。
育ててくれたのは祖母でした。 他人からもらった母乳を妹と一緒に飲んで育ったそうです。
小学校4年生の時、アリフ君は学校をやめ、年老いた祖母に代わり一家の長になりました。
毎朝7時に起きて、昨日と同じ服を着て出かけます。その手には教科書も文房具もなく、向かうのは日雇い労働の案内所です。多くの場合、子どもにできる雑用が多い建設現場での仕事が見つかり、車に乗って現場に向かいます。
子どもにもできるとされる雑用とはいえ、建設現場での仕事は過酷です。 材木や石、あるいは1個2kgのレンガをいくつも小さな肩に乗せて何度も運ばなくてはならないのです。
アリフ君の祖母は言います。
建設現場で働く少年の夢とは?
申し遅れましたが、私は認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンの鈴木綾希子(すずき・あきこ)と申します。
もし、お住まいの近くの建設現場でアリフ君のような少年が働いていたら、と想像してみていただけますでしょうか。このようなことがあってはならない、とすぐにお分かりいただけるのではないかと思います。
※2019年に調査で訪れたネパールにて
私は、幼少期を過ごしたマレーシアで実際にそのような経験をしたことがあります。
家族とマーケットを歩いていた時のことです。誰かが私の服を引っ張ってきたため振り返ると、ボロボロの服を着た、当時の私と同じ5, 6歳の男の子が立っていました。彼は、私たち家族に両手を差し出してきましたが、私はその意味が理解できませんでした。家族が男の子にお金を手渡すと、彼はそのお金を大事そうに握りしめてその場を離れていきました。
私は今でもその時の光景をはっきりと思い出すことができます。そして、 私と同じくらいの年の男の子が、なぜ自分自身で「お金を得る」ことをしなければならないのか 、疑問に思ったことを覚えています。
その男の子も、アリフ君も、 「お金を得る」ための物乞いや仕事を望んでしているのではないのです。
アリフ君は妹を学校に通わせ、祖母の薬代を稼ぐために、今日を生き延びるために働いているのです。
アリフ君にはある日課があります。それは、夜、妹が学校の宿題をやっている間に本を読むことです。いつかもう一度学校に行くその日のために準備をしているのかもしれません。
アリフ君には夢があるそうです。それは、パイロットになって空を飛ぶこと。
「空は青い色でいっぱいだから、高くまで昇ったら、一面の青い色が見えると思う。
飛行機に乗って、どこまでも青い空を見てみたいんだ」
アリフ君がこの夢を叶えるためには、支えになってくれる大人が必要です。
1億5,200万人。児童労働の現実とは?
今も世界には、アリフ君のように働いている子どもたちがいます。その数は、1億5,200万人注1。
子どもたちの声を聞いてください。
(10歳、バングラデシュ)
(10歳、バングラデシュ)
(10歳、バングラデシュ)
学校に行くべき時間に働いている子どもたちの多くは、将来、自立するために必要な知識や思考力を身に付けることができません。
この子どもたちが、児童労働から解放され、学校に行けるようにするには、どうすればいのでしょうか?
児童労働には、複雑な背景があり、一時的にモノやお金を寄付するだけでは解決しません。長期的に彼らを見守り、支援していくことが必要です。こうした活動を支える仕組みのひとつに、「子どもスポンサーシップ」があります。
「子どもスポンサーシップ」とは?
「子どもスポンサーシップ」とは、私が働く認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営している、子どもたちの「こころ」と「身体」の成長を継続的かつ長期的に見守るプログラムです。
「子どもスポンサー」 になっていただいた方には、子どもたちのもう一人の親のように、子どもたちの成長を見守っていただいています。
実は、この記事の最初で紹介したアリフ君は、子どもスポンサーの支援を受けて、学校に通い始めることができました。
「子どもスポンサー」を運営するグッドネーバーズ・ジャパンとは?
子どもの支援に力を入れている国際NGO
私の職場であるグッドネーバーズ・ジャパンについても紹介させてください。
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織であるグッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、 海外と日本国内で、子どもたちの「こころ」と「身体」を守る活動をしています 。
アジアやアフリカでは、児童労働や早すぎる結婚などから子どもを守る啓発活動や、教育を受ける機会の提供、水や医療などの支援を実施してきました。また、日本国内ではひとり親世帯を対象とした食品支援を行っています。
グッドネーバーズの活動実績
2019年には、グッドネーバーズ・インターナショナル全体で、40ヵ国以上で、20万人以上の子どもたちを対象にさまざまな支援を行い、以下のような成果をあげることができました。
「子どもスポンサー」になると?
子どもスポンサーには「みんなの成長を見守るコース」と「ひとりの成長を見守るコース」の2種類があります。
みんなで支える「みんなの成長を見守るコース」
「みんなの成長を見守るコース」では、複数のスポンサーで、複数の子どもの成長を支援します。
まずは気軽に始めてみたいという方、いろいろな国の子どもを支援したいという方が、こちらのコースを選ばれています。
※グッドネーバーズ・ジャパンの活動国:インド、インドネシア、カンボジア、ネパール、バングラデシュ、エチオピア、チャド
毎月、あるひとりの子どもの写真と手紙付きの成長報告書がEメールで届きます。
毎年成長を実感できる「ひとりの成長を見守るコース」
「ひとりの成長を見守るコース」は、ひとりの子どもの成長を一対一で見守るコースです。
その子どもとお手紙で交流したり、実際に会いに行くこともでき、深い関係を築けるのが魅力です。
※ご支援金は直接子どもに渡るのではなく、子どもの住んでいる地域全体の環境改善のために使われます。
年に1回ずつ、その子の写真付きの成長報告と、お手紙が郵送で届きます。
(2020年11月現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響で支援地の訪問やお手紙による交流に制限があります。)
子どもスポンサーになってよかった!
「みんなの成長を見守るコース」でご支援を続けていただいている、神奈川県在住の女性の子どもスポンサー様の言葉を紹介させていただきます。
「育ちざかりの子どもがいる私は、
『ひとりの成長を見守るコース』を続けていけるか少しだけ心配だったので、月々1,000円で始められる『みんなの成長を見守るコース』を選びました。
毎月、いろんなお子さんの成長記録が届くのがとても楽しみです 」
「ひとりの成長を見守るコース」を選んでいただいた福岡県在住の子どもスポンサー様からは、次のような言葉を頂戴しました。
「ネパールの女の子の支援を始めてから、
ネパールという国への親近感が湧いてきて、いろいろ調べたりしています。
二人の子どもが独立してゆとりができたので、
いつか夫婦でネパールに旅行に行って、子どもに会うのが夢です 」
支援している子どもと、実際に会えた!
「ひとりの成長を見守るコース」のスポンサーをされている東京都在住の森原さまは、実際にバングラデシュに住むジャナットちゃんに会いに行ってくださいました。
森原さまが子どもスポンサーになったとき、ジャナットちゃんは幼稚園児でした。
毎日元気に幼稚園に通い、園でも家でも活発なジャナットちゃん。
将来の夢はお医者さんです。
唯一の働き手であるお父さんは、日雇いの仕事をして一家を支えていますが、収入は月8,000円ほど。決して十分な額ではありませんでした。
そんなとき、一家は、子どもスポンサーの支援を受けることに決まりました。
保健教育や医薬品の提供、学用品の支援など、さまざまなサポートを受けられるようになりました。
小学生になったジャナットちゃんは、大きな病気やケガもなく、元気に学校に通っています。
お医者さんになりたいという希望はますます強くなりました。
「 教育を受けていないと、将来できる仕事が限られ低賃金で働かざるを得ません。
そうすると貧困から抜け出せなくなってしまいます。
グッドネーバーズには、今後、経済発展の恩恵を受けにくい農村部の活動にさらに力を入れていただきたいですね」と森原さまはお話しくださいました。
また、次のようにもおっしゃっていました。
「 日本でも、ひとりでも多くの人が支援者になってくれるといいですね。
私も微力ながら支援を続けていきます」
ご寄付が、子どもたちの成長を支える
子どもスポンサーとしてのご寄付は、子どもたちの生活環境の改善や保護者の自立、教育環境を整えるなどの活動に使われます。その結果、児童労働から解放される子どもたちも少なくありません。
例えば、 1日あたり33円(毎月1,000円)から始めていただける「みんなの成長を見守るコース」 でご支援を1年間続けていただけますと、以下のようなことができます。
グッドネーバーズ・ジャパンは、数あるNPO法人のなかでも、一定の基準を満たしていると東京都の認定を受けた認定NPO法人です。
この認定は 「活動や組織運営、情報公開が適切に行われている、公益性の高い団体」 であることの証明で、現在、日本には50,000以上注2のNPO法人がありますが、「認定NPO法人」として認定されているのは、わずか2%注3 に過ぎません。
このため、ご寄付がきちんと子どもたちのために使われるかという点についてはご安心いただければと存じます。
さらに、「認定NPO法人」への寄付は 寄付金控除の対象となるため、寄付金額の約40%が税額から控除 されます。
子どもたちの未来のためにできること
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
途上国の問題を身近な問題として感じるのは難しいかもしれません。
しかし、子どもの頃の「苦しい」「悲しい」「辛い」という気持ちはどなたでも感じたことがあるかと思います。その時に、手を差し伸べ、助けてくれる人がいれば、それはその子どもの人生を変えるほどの出会いになるかもしれません。途上国の子どもは、そのような存在を必要としています。
ここまでお読みいただいて、
「働く子どもを一人でも減らしたい」「子どもに夢をもってほしい」
と感じていただけたなら、どうか、子どもスポンサーになっていただけないでしょうか。
あなたのご支援で教育を受ける機会を得られ、教室で楽しそうに授業を受ける子どもたちの笑顔を想像してみてください。
あなたが子どもスポンサーになってくださることで、アリフ君のように学校に通い始めることができる子どもを増やすことができます。
注1 国際労働機関(ILO)の報告書 Global Estimates of Child Labour: Results and Trends, 2012-2016 より。「児童労働」とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の危険で有害な労働を指します。
注2,3 内閣府NPOホームページ『特定非営利活動法人の認定数の推移』より引用