ハイエナに食べられた子どもたち・・・苦境のエチオピアで追い求める、争いと絶望のない未来 ~日本人駐在員へのインタビュー~
グッドネーバーズ・ジャパンは、貧困に苦しむ国内外の子どもたちを支援しています。
私たちの支援対象国の一つであるエチオピアは、世界の中でも貧困問題がきわめて深刻であり、人道支援を必要とする人は2,100万人を超えます*。
グッドネーバーズ・ジャパンのエチオピア駐在員として活動する松隈は、飢えに苦しむ避難民や、紛争で傷つけられた人々と直に接しながら、少しでも状況を改善するべく、現地で日々奮闘しています。その中で抱く葛藤、支援者としてのある“覚悟”、そして、現地の人と共に育む平和のかたちとは?
今回、当団体スタッフが、松隈にエチオピア駐在員としての想いを聞きました。インタビュー形式でお届けします。
*OCHA (2024) Humanitarian Response Plan Ethiopia
ハエにたかられる子ども・・・現地の過酷な状況を前に抱くもどかしさ
ーーエチオピアでは、どのような活動をしていますか?
「私は約2年前からエチオピア駐在員として活動を始め、これまでに7つの事業を担当してきました。活動を始めた当初は、紛争で故郷を追われ別の場所に避難した人たちへ食糧を配布するなど、緊急的な支援を中心に取り組みました。
今では、緊急支援を続ける傍ら、紛争などで被害を受けた人たちの自立を後押しできるよう、小規模なビジネスを起業するためのサポートや、今後同じ争いが起きないため、住民たちへの平和啓発活動なども行っています。」
ーー多岐にわたる活動に取り組んでいますが、その背景にはやはり、エチオピアの深刻な状況があるのでしょうか?
「はい。各地で起こる紛争や開発の遅れもあり、エチオピアの貧困問題は言葉に言い表せられないほどひどい状況です。
私たちが支援している、とある避難民キャンプには、あまりにたくさんの人たちが押し寄せて建物に入りきらず、夜に外で寝ていた子どもがハイエナに食べられてしまったという辛い出来事もありました。」
ーー耳を疑うような話ですね…。その避難民キャンプには、何人ほどが身を寄せているのですか?
「2万3,000人ほどです。私自身この避難民キャンプを何度も訪れていますが、建物の中は隙間なく人で溢れていて、衛生環境もとても悪く、このような状態が2年以上も続いています。
避難民キャンプで会う子どもたちを見ると、いつも顔や身体の周りにハエが飛んでいるんです。たくさんのハエが目に止まっていても、子どもたちは手で払ったりしません。悲しいけれど、ハエにたかられることが当たり前になっているからだと思います。
3歳の娘がいる私にとって、自分の子どもと同じ年くらいの子たちがこのような過酷な状況に置かれている姿を目にするのはあまりにも辛く、“この子たちの人生は、この先もずっとこの環境のままで終わってしまうの?”と、胸が張り裂けそうになります。
また、そういった子どもたちを含め、数えきれない人が助けを必要としているのに、どうしても事業予算には限界があり、全員を支援することができません。できることなら一人残らず助けたいのに、ニーズに対して資金が足りず、支援の対象にする人を選ばなければならないことは、私にとって一番辛い仕事です。」
ーーとてももどかしいですね。
「はい。一人でも多くの人の助けになれるように、これからもできる限りの努力をしていきたいと思います。
また、私が普段一緒に働いているエチオピア人のスタッフたちも、自分の国で起こる人道危機の状況を何とか改善したいという強い気持ちを持ちながら仕事に励んでおり、今後とも彼らと一緒に最善の支援を目指して活動したいと思います。」
その人の未来を奪わない支援を届けたい
ーーエチオピアでの活動で印象的だった出来事を教えてください。
「この国では民族同士の争いが頻繫に起こっていて、昨日まで隣に住んでいた別の民族の人に命を奪われた、家を焼き払われた、といった残酷な事件が後を絶ちません。
私たちが支援しているコミュニティでも、二つの民族が長年対立をしてきました。現在状況は落ち着いていますが、再び両者で紛争が起きないよう、住民たちへの平和啓発に力を入れています。その一環で、現地の小学校に「平和クラブ」をつくり、先生や子どもたちが「平和とは何か」「平和を守るためにどう行動すればいいか」をみんなで考える環境づくりに取り組んできました。
とある平和クラブでのことです。
先生や子どもたちが自分たちにとっての「平和」を考えた結果、クラスで一番困っている子をみんなで助けることに決めました。互いに話し合ったところ、12歳で出産し、幼い子どもを育てているクラスメイトの女の子をサポートすることになりました。その子と赤ちゃんが病気になった時に病院にかかれるよう、お金をみんなで集め、医療保険に入れるようにしてあげたのです。」
ーーすごい行動力ですね。
「平和クラブを起爆剤に、子どもたちがここまで自発的に行動を起こしてくれたことに感動しました。そして、何かのきっかけ一つで、誰だって行動を起こせること、自分たちの未来は自分たちの手でつくれるということに改めて気づかされました。
と言うのも、支援を施すということは、時に相手の可能性や未来を奪いかねないと私は感じることがあります。」
ーー詳しく聞かせてください。
「支援を受けて暮らすことが当たり前になっている場合、もしその支援がある日止まってしまえば、その人たちは途方に暮れてしまうかもしれません。また、支援を受け続ける生活の中で、自信ややる気を失ってしまう場合もあります。なので、生活の糧を得るきっかけを提供し自立を後押しすることで、その人たちが自尊心や希望を取り戻せるようサポートしていきたいと思います。
たとえば、私たちが活動するある避難民キャンプでは、避難民の人たちが生活を立て直せるよう、研修や起業支援を行っています。支援を受けてビジネスを始め、貯蓄までできるようになった避難民の姿は、外からの支援に頼っていた頃よりも自信に満ち溢れ、生き生きとして見えます。」
ーーただ与え続けるのではなく、その人たちが未来へ歩んでいけるような支援を大切にしているのですね。
「はい。私は支援を提供する側として、「自分たちの支援が、支援を受け取る側の人たちの未来を左右するかもしれない」という覚悟をもって、現地の人たちと向き合わなければならないなと感じています。
そして、彼らは単に支援を受け取るだけの存在ではなく、一人ひとりが未来をつくり出すためのスキルやポテンシャルを秘めています。そのため、それぞれが持っている力を引き出せるようサポートし、その人たちの未来を奪うのではなく、各々の可能性が広がるような支援をしていきたいです。」
平和な未来を目指して
ーー今後の支援活動に向けての目標を教えてください。
「とにかく、私たちにできる最大限の活動を続け、一人でも多くの人の助けになりたいです。そして、現地の人々が自分たちの力で平和を守り抜けるための土台づくりに貢献できればと思います。
先日、以前紛争をしていた二つの民族への平和啓発のため、両者が音楽やダンスで交流するイベントを開催したのですが、参加した両民族の人たちに、私はこう伝えました。
『みんなで一緒に踊り、笑いあった今日のことを、どうか忘れないでいてほしいです。
もしこの先、あなたたちの間でまた争いが起こりそうになってしまったとしたら、その相手は昔一緒に楽しい時間を共有した同じ人間であること、一人ひとりに大切な家族や友人がいること、そして、そんな大切な人の命が奪われる悲しみはみんな同じであることを、どうか思い出してください。』
エチオピアの人たちが平和な未来を掴めるよう、これからも精一杯活動していきたいと思います。」
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