【ウクライナ危機】「ただ助けたい」子どもたちを支える現地職員にインタビュー 第2回
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって600日以上が経ちました。
最近ではウクライナ情勢がニュースで取り上げられることも少なくなってしまいましたが、依然として多くの人々が避難生活を続けています。
グッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)は、戦争の発生直後より食糧支援や越冬支援などの活動を現地のさまざまな提携団体と協力して行ってまいりました。現在、皆様により現場に近い声を届けるべく、現地職員の方々へのインタビューを実施し、活動への想いや今後の展望などについて聞いています。
今回は、ルーマニアを拠点に活動するGNJPの提携団体、Fight for Freedom (FFF) のアリーナさんにお話を伺いました。アリーナさんはウクライナ生まれのアメリカ人で、2023年4月よりFFFで渉外業務を担当しています。生まれ故郷への想い、日々の活動、そしてGNJPとの協働についてインタビューしました。
生まれ故郷のために「何かしないと」
―― FFFで活動をするに至った経緯について教えてください。
アリーナさん 私はもともと医療従事者で、アメリカで8年ほど救命・救急治療に携わっていました。その間、NPOや人道支援団体でボランティア活動をしていました。
ロシアが軍事侵攻を始めたとき、私は大きな衝撃を受けました。ウクライナは私の生まれ故郷ですし、親戚も多く住んでいます。親戚の中には国外に避難した人もいれば、国内に残らざるを得ない人もいました。全く連絡が取れなかった親戚もいます。
私は「何かしないと」という気持ちに駆られ、ボランティア活動を始めました。最初は難民キャンプでのボランティアに参加しました。戦争が始まって間もない、2022年5月のことですね。活動を始めてすぐ、「私がやりたいのはこれだ!」と確信しました。その後もボランティア活動を続け、ドイツやポーランドのキャンプに赴きました。そして2023年4月、FFFでの勤務を開始するために、アメリカでの仕事を辞めてルーマニアに来ました。
―― アメリカでの仕事を辞め、ルーマニアで働くことに不安や怖さはありましたか?
もちろん不安はありました。人道支援を仕事とするのも初めてでしたし、戦争に巻き込まれる可能性もゼロではありません。ただ、心強いチームがいるし、何かあれば頼れる人たちがいると分かっていたので、そこまで怖くなかったです。
FFFとの出会い
―― FFFとはどのようにして出会ったのでしょうか?
アリーナさん FFFと出会ったのは2022年12月のことです。FFFの食糧配付の現場にボランティアとして参加しました。FFFのチームワークはとても優れていて、かなり機能的に活動していたのに驚きました。
―― あらゆるボランティア活動をご経験されたとのことですが、最終的にFFFで働くことにしたのはなぜでしょうか?
アリーナさん 頼もしいリーダーがいる、行動力のあるチームだったからです。FFFの代表を務めるジョージ・イグナットは強い決断力の持ち主で、私たちが何かを提案するとすぐに「やろう!」と言ってくれます。チームのみんなにも「すぐに行動しよう」「人々のニーズに応えよう」という思いがあり、この団体だったら多くの人を支えられるのではないかと思いました。
他の団体だとリスクを恐れたり、十分に計画を練った上で行動に移したりしますが、FFFはとりあえず現場に向かい、その道中で計画を立てることがあります。救命救急の現場に長い間いた身としては、目まぐるしく状況が変わる日々は嫌いではありませんし、自分に合った場所にいると思います。
―― 現在はどのようなお仕事をされていますか。
アリーナさん FFFでは渉外業務を担当しています。主な役割としては、支援者の方々との良好な関係を築いたり、新しく支援者になってくださる方を探すことです。私たちが活動を続けるには支援者の存在は欠かせません。しかし、最近ではウクライナ情勢を取り上げるニュースが少なくなっているので、皆さんに関心を持ち続けてもらえるよう、あらゆるSNSを使ってウクライナの人々のことを発信したり、イベントに参加して状況を伝えたりしています。
他の団体とコミュニケーションをとることも大事な役割の一つです。ウクライナ内の団体と連絡をとり必要な物資を提供したり、海外からの支援の受け口になったりします。支援をしたいと言ってくださる支援者に対し、他団体を紹介することもあります。私たちはただ子どもたちを助けたいので、自分たちの利益のために動くのではなく、支援の輪を広げることが大事な仕事だと考えています。
その他には、ボランティアの受け入れ業務や取材対応などを行っています。守られるべき子どもたちの写真が不適切に使われることは許されないので、取材後もチェックを欠かしません。
―― FFFは2022年7月より、ウクライナから避難してきた孤児院の子どもたちを受け入れていますね。GNJPもこの活動を支援しています。FFFはこの子どもたちどのように支援しているのでしょうか?
アリーナさん 私たちは、子どもたちが安心して暮らせる環境を整えています。子どもたちが生活する建物を用意し、食事を提供しています。おもちゃや生活物資も提供しています。食事の提供を始め、子どもたちの生活に必要な物資はGNJPからも支援を受けています。
私たちは場所と物資の提供をしていますが、実際に子どもたちを支援しているのは孤児院のスタッフの方々です。孤児院には約50人のスタッフと医者が常駐しており、中には20年以上この孤児院で働いている方もいます。ウクライナ語の読み書き、算数の授業をする先生もいます。スタッフの方々は私たちより子どもたちをずっとよく分かっているので、とても信頼しています。
―― ルーマニアに避難してきてから子どもたちの変化はありますか?
アリーナさん やはり最初はみんな怖がっていました。私を含め、新しく会う人たちを怪しんでいるようでした。ただ、みんな新しい環境にもすぐに慣れて、今では初対面の人に会っても、知っている人と一緒にいたらすぐに駆け寄っています。
今後の活動について:「状況は刻一刻変わる」
―― これからはどのような活動を行っていきますか?今後の課題などはありますか?
アリーナさん 私たちはルーマニアを拠点を置き活動してきましたが、ウクライナにも拠点を置くことになりました。なので、直近の活動としてはその準備と開設セレモニーの実施があります。ウクライナに拠点を置くことによって、すぐに支援を届けられるようになります。また、コミュニティとの連携を強化することで、よりウクライナの人々に寄り添った活動ができるようになると感じています。状況は刻一刻と変わるので、その時に適切な支援を届けていきたいです。
課題としては、やはり継続的に支援を行うことでしょうか。最近でも食糧支援が続けられなくなってしまった事例があるので、渉外業務にも引き続き尽力していきます。
「GNJPとも活動を続けていきたい」
―― FFFとしてはGNJPの支援をどのように感じていますか?
アリーナさん 本当にありがたく感じています。GNJPは、食糧支援やPSS(心理社会支援)とあらゆる形で支援を続けてくださっています。特にPSSは子どもたちが参加しやすいプログラムだったので、とても助かりました。
GNJPのスタッフの方も同じ熱意をもって活動してくれるので、とても心強く思っています。
―― 8月にはオンラインの活動報告会にも参加いただきました。最後に日本の方々へのメッセージをお願いします。
アリーナさん 8月のオンライン報告会はとてもいい機会でした。支援者の方々とお話しする機会はたくさんありますが、あのようにライブ中継でつながるような機会は初めてだったので、私たちとしてもとても嬉しかったです。
いつもご支援いただいている皆様、ありがとうございます。引き続きウクライナの状況や人々に関心を持ち続けてくださると嬉しいです。
インタビューを終えて(インタビュー担当者より)
インタビュー中の “We just want to help (ただ助けたい)” というアリーナさんの言葉がとても印象的でした。他の言葉の節々からも、子どもたちを助けたい、支えたいという想いが感じられ、とても強い情熱をもってお仕事をされていることが伝わってきました。また、リスクを恐れず現場に飛び込んでいく姿勢は本当に頼もしく感じました。最近ではウクライナ情勢について聞くことが減ってしまいましたが、避難を余儀なくされている子どもたちがいる状況は変わっていません。私たちも関心を持ち続け、支援を続けることが大事だと感じました。
子どもたちを支える現地職員にインタビュー 第1回はこちら
アリーナさんにもご参加いただいた、8月のオンライン報告会についてはこちら
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