【ウクライナ危機】難民のための新事業は、シェルター・教育・心のケア・現金給付
グッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)は、2023年2月に、ルーマニアのガラツィ市でウクライナから国境を越えて避難してきた人々を支援する事業を開始しました。今回は、大きく分けて4つの活動から成り立つその事業について紹介します。
①シェルター支援
シェルターとは、困った状況にある人たちが緊急的に寝泊りできる場所のことを指します。今回の事業では、GNJPもパートナー団体とともにガラツィ市においてシェルターを運営します。
もし、皆さんがウクライナから国境を越えてルーマニアに到着したばかりだとすると、今日からしばらくどこに泊まるのか、を探さなければなりません。子ども連れのお母さんで大きな荷物をもっていると移動するだけでも大変な上、現地の言葉もわからず、知り合いもいない中で、子どもたちが少しでも安全に滞在できる環境を探すのはとても困難です。これから何カ月の間、母国から離れて暮らすのか、その期間すらはっきりしないので、手持ちのお金が足りなくなるのではないかという不安もあります。
そのような人たちのために、GNJPのルーマニアにおける現地提携団体の1つが2022年8月より、到着してすぐに無料で宿泊できるシェルターを運営しています。2023年2月からは、GNJPはこのシェルター運営を協働で行うこととなりました。シェルターでは、宿泊だけでなく、無料のWi-Fiが使え、無料の食事も用意されています。 一度に利用できる人数は約80名で、避難してくる人は、親子連れが圧倒的に多いため、利用者の半分弱は子どもたちです。
ルーマニアでは、避難してきた人が長期的に滞在できるように、公営住宅の無償提供や、一般家庭での受け入れなどが行われています。そのような長期的な滞在場所に移る前に安全に休め、情報を収集することのできる一時的な滞在場所として、私たちのシェルターが活用されています。
②教育支援
ルーマニアに避難してくる子どもたちの年齢は、乳児~高校生まで様々です。中でも、自分で学習するのが難しい小学生の教育が大きな課題となっています。
低学年の子どもたちは、普段の生活でも、まずは落ち着いて机に座り、勉強の習慣づけをする大切な時期です。しかし、避難生活中の子どもたちは、長時間の移動や、普段と違う環境という心理的なハードルのため、落ち着いて勉強できるような状況にはありません。そうした子どもたちが、落ち着いて勉強できるよう、GNJPでは写真のような教室をいくつか用意しました。さらに、避難してきた人自身も含めて、広くウクライナ語が話せる教員を雇用することで、子どもたちの学習環境を整えていきます。1クラスには、10名程度の子どもたちが集まって、クラスメイトとおしゃべりしたり、給食を食べたり、音楽の授業で歌を歌ったり、普通の学校と同じような経験ができます。
また、ウクライナはデジタル先進国なのでオンライン授業が積極的に行われており、避難先からもウクライナの教育プログラムを受けることができます。しかし、小学生の子どもたちにスマホやタブレットを持たせている親は、あまり多くなく、授業がせっかく配信されていても、受講ができない状況の子どもたちもたくさんいます。そこで、私たちのプロジェクトでは、オンライン授業が受けやすいようなタブレットの貸出を計画しています。同時に、文具や、書き込んで使える教材なども配布する予定です。
③子どもの心理社会的支援 (心のケア)
心理社会的支援とは、戦争や自然災害などで辛い思いをした人たちに対し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病などを予防するための心のケアです。避難してきた子どもたちは、家族との別れや、ロシア軍による攻撃、空爆時の避難の記憶など、つらい経験や気持ちを抱えています。幼稚園や小学生の小さな子どもたちであっても、いろいろな出来事を認識しています。そして、それらの経験や気持ちは、そのままにしておくとPTSDなどの形で身体的・精神的に表に出て、長年子どもたちを苦しめる可能性があります。そのようなことにならないための予防的な支援として、心理社会的支援がとても重要です。心理社会的支援には様々な方法がありますが、GNJPでは「絵をかいたり紙粘土での創作をしたり等を通じて、気持ちや記憶を整理して、ゆっくり受け入れる」というアプローチをとっています。また、創作活動を通じ、それを社会に発表することで、自分は社会と繋がっているという認識をすることができ、安心感を育むことができます。
④現金給付(キャッシュ)支援
最後に紹介するのがキャッシュ支援です。戦争や災害の影響で別の国に避難しなければならなくなった人にとって、一番役に立つのは、実は現金です。避難所では、さまざまな支援物資を受け取れますが、一人一人のニーズに対応できるものは少なく、長期化する避難生活の中で、自分に合った薬や食材などを購入するためにも、現金は欠かせません。もしかしたら「お金を渡したら、ギャンブルやお酒に使ってしまうのではないか」と心配する人がいるかもしれません。最近の調査では、そういう人もいるものの、ごく少数であることが世界的に実証されています。むしろ、そのような行為は、その人からのSOSサインであり、そのようなお金の使い方をしてしまう根本の問題と向き合い、何らかの支援につなげていくことが必要とされています。
給付する現金の金額は、1人あたり1か月約17000円です。これはルーマニアのUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)で決められたルールで、ルーマニアでのウクライナの方へのキャッシュ支援は一律この金額で行われます。ルーマニアの物価は日本とほとんど同じなので、支援として給付される現金だけでは生きていくことはできません。あくまでも緊急的な必要最低限の金額となっています。
キャッシュ支援は一時的なものなので、避難してきた人は、病気や高齢で働けない人を除き、できるだけ多くの人が何らかの仕事を探して少しでも自立しようとしています。しかし、ウクライナの人々にとって、ルーマニアの一般企業で働くには語学の壁が課題となります。そこで、私たちは、キャッシュ支援と並行し、「ウクライナ人の子どもたちのための先生役」「事業に関してウクライナから避難してきた人への聞き取り調査を行うリサーチ役」といった形で、ウクライナからの難民の人たちに事業に従事してもらい、周囲とのつながりを持ちつつ、何らかの収入を得られる人を増やそうとしています。
このプロジェクトでは、これから1年間にわたって、ルーマニアに避難したウクライナの人々を支援する予定です。今後も事業の進捗状況をお伝えいたします。引き続き、皆様のあたたかいご支援をお願い致します。
(このプロジェクトは、みなさまからのご寄付、および、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成により実施しています。)
ウクライナで支援を必要としているすべての人のため、どうか、緊急支援募金にご協力をお願いします。
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